安心・安全への取り組み

佃煮の製造工程

佃煮

佃煮の歴史は古く、江戸時代に佃島の漁師が雑魚の塩煮を作り、保存食にしたのが始まりと言われています。江戸時代の終わりには、エビ、ハゼ、シラウオ、ハマグリ、アサリなどの小魚,小エビを醤油、砂糖などで煮込んだものが市販されるようになりましたが、これが今の佃煮と言えるでしょう。佃煮は、魚体を丸ごと利用するのでたんぱく質はもちろんのこと、カルシウムや鉄分などのミネラル、また、ビタミンなどの微量栄養成分が含まれます。調味の方法からみると、醤油と砂糖を主とした普通の佃煮のほかに、次のようなものがあります。

時雨煮 ハマグリやアサリを、たまり醤油に生姜、山椒の実などを加えて煮込んだもの。
甘露煮 焼き干しにした原料を砂糖などをたっぷり使って汁気がなくなるまで煮込んだもの。
飴煮 醤油・酒・みりんなどを煮立てた中に材料を入れ、さらに水飴を加えて煮詰めたもの。
でんぷ カツオ・マグロ・カレイ・タラ・タイ・エビなどを蒸して身だけをとり、圧搾して水分をとり、炒ってもみほぐし、乾燥して、醤油、みりん、砂糖などで調味したもの。

佃煮は原料や加工方法に地域独自の好みと慣習が影響し、多くの種類が生産されています。ここでは、一般的な佃煮の製造工程を紹介します。

佃煮の製造工程

  • 原料

原料には、鮮魚、冷凍魚、煮干、素干しなどが用いられます。いずれも鮮度がよく、形の整ったものであり、かつ異物混入の少ないものがよい原料と言えます。煮干、素干しを原料とした場合は、目視で異物を取り除くほか、金属探知機やX線を使用することもあります。一方、冷凍魚の場合は、自然解凍して使用します。

  • 洗浄

鮮魚や冷凍魚の場合、原料を水で洗うことにより、鱗や表皮に付着した異物を洗い流すとともに、異物を比重差で除去します。

使用する用水については水道法でいう飲用適の水(水道水または衛生的に水道水以上の水)を使います。井戸水については水道水の基準に沿って年に二回以上の食中毒菌や一般生菌数などの細菌検査、また化学検査を行い、安全性を確かめなければなりません。井戸水の殺菌には、次亜塩素酸ナトリウムを自動滴下装置などで末端(蛇口)の遊離残留塩素濃度が0.1ppm以上を保持することが必要です。また、貯め水には細菌の汚染や増殖、また化学物質の混入が懸念されるので特に注意が必要です。

  • 計量

原料および副原料を正確に計量し、調味液を配合します。繰り返し使われて甘みのこなれた調味液(差し液)を加える場合もあります。これらの計量記録を残すことも検討事項やクレーム処理などに利用するため大切な仕事になります。また、食品衛生法で使用基準のある保存料・ソルビン酸は、佃煮1kgに対してソルビン酸として含まれる量が1.0g以下として規定されているので、計量や混合に際しては正確さが要求されます。

砂糖は、一般に中白といわれるやや黄色みがかった砂糖が使われます。砂糖は甘味料としてだけでなく、製品に光沢を付与し、日持ち向上の水分活性に関与します。
また、吸湿性があるので乾燥した場所(湿度約70%以下)で保管することが大切です。

水飴は、一般に糖質85%、水分15%で、甘みは砂糖に劣りますが、さわやかな甘さや、つややかな粘着性を調味と物性に利用します。また、水飴のほかに蜂蜜やソルビット(糖アルコール)なども利用することがあります。

  • 加熱(煮熟)

原料、調味液を煮釜に入れて加熱します。調味液濃度が高いので、沸点が上昇し、煮熟
温度が100℃を越える温度になり、煮熟終了時の残存細菌は極めて少なくなります。しかも水分活性が低いため保存性に優れています。先の計量・配合とともに加熱によって製品の安全性を高める工程として衛生面および調理面における重要な管理工程として取り扱われています。
煮熟方法としては、次のようなものがあります。

煎りつけ煮
あらかじめ調理した糖の高い調味液を少量、釜に入れ加熱沸騰させ、この中に原料を入れ、液が原料に浸透したら引き上げて冷却します。

浸漬煮
事前に水炊きして十分水分を含ませて原料を熱い調味液の中に入れ煮熟します。

浮かし煮
水、寒天、醤油、砂糖、水飴などで調味した煮液を沸騰させ釜に入れ、一定時間煮た後煮汁を振り切り、冷却します。またこれに別途調整しておいた濃厚なかけ汁をからませる場合もあります。

甘露煮
魚を素焼きにし、梅酢などの酸液の中で骨が軟らかくなるまで煮ます。これに水飴、砂糖、醤油などを加え味がしみこむまで煮熟します。

東北第一冷蔵庫イメージ

  • 液きり

浮かし煮などは、煮熟後直ちにざるにとり高温の調味液を振り切ります。大型のステンレス板に入れ、傾斜をつけて行う場合もあります。

  • 冷却

自然の冷気や大型扇風機で品温を室温まで降下させます。冷却は落下菌防止のため、短時間で行います。冷却後にステンレス板全体を網などで覆い、異物混入を防ぐこともあります。

  • 包装

包装形態は、小売用がトレーラップや深絞り包装等で行います。これらは手作業あるいは、自動包装機で100g程度の製品を包装します。業務用では製品1~2kgをハトロン紙袋などで包装します。この際、製品の色調が濃いため目視による異物の検出は難しいことから包装後、金属探知機を使用することもあります。

  • 保管(冷凍・冷蔵)

一般に佃煮類は製造即出荷ですが、糖分濃度が高いため冷凍による原料の変性が極めて少ないと考えられています。このことから、製品を冷凍保管することで生産を調節できるようになりました。

  • 出荷

佃煮類は常温流通が一般です。しかし、最近の消費者の嗜好は低塩・低糖の要望が強く、低塩・低糖の製品は水分活性の上昇で、日持ちの低下が懸念されるところです。このような製品は10℃以下の流通が必要になってきます。

わかさぎ甘露煮の表示例

出典:佃煮加工場の品質・衛生管理(大日本水産会発行)

品名 わかさぎ甘露煮
原材料名 わかさぎ、醤油(小麦を含む)、砂糖、還元水飴、調味料(アミノ酸等)
内容量 500g
賞味期限 2003.3.31
保存方法 要冷蔵(10℃以下で保存してください)
製造者 株式会社全水
住所・TEL

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